テヘラン絨毯
テヘラン絨毯は、イランの首都テヘランで織られた希少なペルシャ絨毯で、特に19世紀末から20世紀初頭にかけて王侯貴族や高官の邸宅のために特注された格式ある絨毯として知られています。政治と文化の中心地であったテヘランでは、宮廷に仕える職工や有力商人の庇護のもと、技術と芸術性を極めた絨毯制作が行われていました。
テヘラン絨毯の意匠は非常に洗練されており、典型的な中央メダリオン構成のほか、草花や鳥、生命の樹などを織り込んだ自然主義的な文様が特徴的です。特に細密画のような写実的な花文様は、他産地には見られない優雅な表現で、絨毯という枠を超えた芸術品としての評価を受けています。
色彩は深みのある藍、赤、アイボリー、金茶などを基調に、繊細でありながらも重厚な調和を保ちます。これらは草木染を用いて染め上げられ、使い込むほどに柔らかな光沢と風合いが増していきます。
素材には高品質なコルクウールやシルクが使用され、極めて細かい織りによって緻密な図案が再現されています。制作数は限られており、特に王侯貴族や宮廷の居室に敷かれたテヘラン絨毯は、現在では美術館やコレクターズアイテムとして高く評価されています。
その優雅な佇まいと繊細な技術は、単なる装飾品ではなく、時代と文化を映す貴重な歴史遺産としての価値を宿しています。