リリアン絨毯
リリアン絨毯は、イラン中部、アラク南東のコミン地区に位置する小さな村リリアンで織られるペルシャ絨毯です。この地域に住むアルメニア人の職人たちによって作られ、サファヴィー朝のアッバス1世による強制移住を起源とする彼らのキリスト教文化が、絨毯の意匠に独特の個性を与えています。リリアン絨毯は、その希少性と地域特有の美しさから、ペルシャ絨毯の中でも特別な存在として知られています。
リリアン絨毯の最も特徴的な意匠は、鮮やかなピンクや赤を基調としたフローラルモチーフと曲線的なデザインです。中央にはしばしば生命の木やヘラティ文様が配され、ザクロ、葡萄、鳥、鹿などのモチーフが対称的かつ繊細に織り込まれます。これらの図案は、アルメニア人の文化的背景と自然への深い敬意を反映し、調和の取れた美しさと物語性を湛えています。
色彩は草木染めによる鮮やかで柔らかな色調が特徴で、特にピンクやクリーム、藍、緑が際立ちます。この鮮やかなピンクはリリアン絨毯の「署名」とも言える特徴で、一目でその産地を識別できるほどです。経年変化によってさらに深みを増す色合いは、ヴィンテージ品としての魅力も高めています。
素材には上質なウールが主に使用され、コットンの基盤に織り上げられることで、丈夫でありながら薄く折り畳みやすい構造が特徴です。織密度は一般的に9万〜25万ノット/�崢�度で、細かな柄を表現しつつ実用性も兼ね備えています。厚みは約4〜7mmと比較的薄手で、日常使いに適した柔軟性と滑らかな手触りを提供します。
リリアン絨毯は、素朴さと洗練された美しさのバランスが魅力で、日本では流通量が少なく希少価値が高い一枚です。ヴィンテージ品では経年による独特の風合いが加わり、空間に温かみと文化的深みを添えるアートピースとして愛されています。
